30代からの人工内耳 〜 聴力低下【体験談】

30代からの人工内耳1 聴覚障害

人工内耳について、わたしの体験を綴っていきます。もともと補聴器で育った私がなぜ人工内耳をつけるに至ったのか。

はじめに断っておきますが、このブログで無闇に人工内耳を勧めるつもりはありません。

大人の人工内耳手術は中途失聴の人が多いと思いますが、元々難聴の場合はこんな感じなんだなーと思っていただければと思います。

それまでの聴力

先天性両耳高度感音性難聴。1歳から右耳に補聴器を装用。80db ほどだったと思います。(今度当時のオージオグラムを載せますかね)

左耳は元々 120db 程度。初めは左も補聴器を装用していましたが、効果を感じなかったため物心ついた頃から自分でつけるのをやめました。

家族とはなんとか電話できますが、他人とは基本的に顔を見ないと会話できないレベル。テレビは字幕必須。

財布や鍵は数えきれないほどなくしている私ですが、補聴器だけはなくしたことがありません。別に自慢することじゃないが。笑。それだけ一時も手放さずに補聴器を活用していました。

ちなみに手話を覚えたのは18歳から。人工内耳に興味を持ったことはありませんでした。

突然の失聴

2018年 GW の東南アジア旅行。5月4日、マレーシアのペナン島にあるショッピングモールで休憩をしていたときのことでした。

がやがやうるさい店内が突然プツッと静かになり、プーッ・・・プーッ・・・と耳鳴りのような音が不規則に聴こえてきました。

あれ?疲れてるのかな?でも耳鳴りでもこんなにひどいものは経験がないし、補聴器が壊れたのかもしれない。いや、そう思いたかった。

数日後、帰国したその足で補聴器店へ直行。しかし補聴器は全く壊れておらず、耳に問題がある可能性が高いとのこと。信じたくなかったので他の補聴器店でも確かめましたが、同じ回答でした。

行きつけの耳鼻科がなかったため、知り合いの紹介で有名な先生がいる病院へ。聴力検査の結果は125db以上でスケールアウト。改めてオージオグラム(検査結果のグラフ)を見ると、自分の目を疑うほど聴力が落ちていました。

問診で「あー聴力落ちたんだね。どっちみち人工内耳だね」とその場で人工内耳を強く勧められました。ひとまず突発性難聴の薬を飲みながら考えましょうということで、先生の著書と人工内耳の資料をもらって帰宅。

人工内耳の相談に行ったわけではないのに…医者の機械的な対応と、もう聴力が戻らないかもしれないというショックでしばらく立ち直れず、人工内耳を検討する気力も起きませんでした。

このとき過去最高の体重、人生初のギックリ腰も経験。今となっては笑える話。

思い返せばこの失聴の1年ぐらい前から、時々耳に入る音が響くことが増えました。うるさいとまではいかないけど煩わしいような、つんとした痛みが走る感じ。

歳をとれば耳も敏感になるのかなぁと楽観していましたが、今思えばこれが前兆だったのかもしれません。自分でも気づかない間に少しずつ聴力も下がっていたのかもしれません。

もともと難聴なので失聴というのもおかしいし、きっと医学的にも「失聴」とは言わないと思います。でも補聴器で音を聞き取っていた私にとって、補聴器の効果がないほど聴力が低下したこの出来事は「失聴」以外にしっくりくる言葉が見つかりませんでした。

音のない世界

それまで補聴器で毎日音を聞いていた生活から一変、まったく音のない生活になり、改めて(補聴器を使わない)ろうの人の気持ちや生活を理解することができた気がします。

漠然と、歳を取ればいずれ聴力は下がるだろうと予想はしていましたが、その生活がどんなものになるかまともに想像したことはありませんでした。お風呂と寝るときだけの静寂が日中ずっと続く日がこんなにも早く来るとは思いませんでした。

少しでも音や声が耳に入るのと入らないのでは世界が全く違う。大きな音に反応することもできないし、声を発することもできない。太陽が出ているのに、横で車が走っているのに、自分の時間だけ止まっているみたい。でもその分、集中力や視覚がより一層研ぎ澄まされる感覚もありました。五感のうち一つがなくなるだけでこんなにも変わるのか。

突発性難聴の薬が切れる頃には諦めもつき、もう聴力は戻らないということを受け入れる覚悟ができました。さて、これからどうしようか。NHKじゃないけど、ろうを生きるか、難聴を生きるか、それがどういうことかを考えさせられた半年間でした。

そしてそんなときに話を聞いてくれた友人たちや家族、理解を示してくれた職場の人達には感謝してもしきれません。手話を覚えておいてよかった。色々な背景を持つ聴こえない友達がたくさんいてよかった。本当にそう思いました。

つづく

母いわく、私が1歳で難聴を診断された際に「進行性ではないが思春期などで聴力が急に落ちる可能性はある」と言われていたそう。なんで教えてくれなかったの…そしたら覚悟もできていたかもしれないのに。なので難聴のお子さんを持つ親御さんたち、そういうことは子どもにちゃんと教えてあげてください。笑

次回に続く。

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