人工内耳の術前検査から手術までの記録です。
突然の聴力低下から手術を受ける決断までの流れはこちら。
術前検査
手術を希望してから入院するまでの3ヶ月間、月2回、術前検査とカウンセリングに通いました。
この検査で手術ができるかどうか最終的に決まります。聴力検査の他に、MRI検査や平衡機能検査など8種類ほどの精密検査がありました。
今の時代だと障害が判明する時点で色々わかるのかもしれませんが、私のときはここまで検査しなかったので良い機会になったと思います。
希望者のみが受けられる遺伝子検査もついでに受けましたが、新たな情報はありませんでした。遺伝的なものではないとのことなので一安心。
MRI検査
人工内耳では、拾った音を脳に伝達するインプラントを蝸牛(うずまき管)に埋め込むのですが、このインプラントが何らかの理由で入らない場合は「適応外」となり、手術を受けることができません。
私の場合はMRI検査で内耳に低形成(奇形)が見つかりました。一般の人より蝸牛が小さいのですが、人工内耳はぎりぎり適応できるとのこと。初めて画像を見たときはなかなかショックでした。ちっちゃ…そもそも渦巻いていませんでした。
平衡機能検査
平衡機能検査は、その名の通り平衡機能があるかどうかを調べます。暗闇でしばらく寝かされた後、明るい部屋で耳に冷風を当てることによってめまいを誘発するような検査でした。
私の場合、この平衡機能、つまり三半規管の機能もかなり乏しいことが判明。昔から平均台とかは苦手なので自覚はありました。
でも視覚情報や深部感覚(目をつぶっても体がどこにあるかを認識する感覚)を統合して脳が処理するため、ある程度のバランス感覚は自然と身についていくんだそう。だから自転車乗れるんだって。脳ってすごいですね。
この平衡機能が正常な人の場合、手術で機能が低下して歩けなくなったり、めまいがひどくなることが懸念されるらしいです。
私は既に機能していないため術後はめまいがなく回復も早いだろうとのこと。医者にも「我々としても気が楽です」と言われました。えっと…喜んで良いのだろうか。笑
カウンセリング
カウンセリングでは、人工内耳や手術に関する説明を受けたり、ST(言語聴覚士)との対話で疑問や不安を解消することができました。
他にも、心理検査の結果をもとにリハビリの方針などを決めていくらしいのですが、肝心の結果を聞き忘れたのが心残り。あのときに書いた絵と作文はどんなふうに解釈されたんだろう。
そして手術の一ヶ月前に入院予約をしました。
手術日
手術当日の数日前から入院。
人工内耳手術の実績が多い病院なのにも関わらず、聴覚障害者への対応にあまり慣れていない印象を受けました。でも耳鼻科に入院するのは聴こえる人の方が圧倒的に多いのは想像できるし仕方ないのかもしれません。
手術日前夜はさすがの自分でもかなりおセンチに。消灯が早く、テレビで気を紛らわせることもできずしょんぼり。本当にこれで良かったのだろうか。手術が失敗してもしものことがあったら、あの汚い部屋を家族に片付けさせるの申し訳ないなぁなんて考えていました。笑
午前の手術だったので当日は朝からバタバタ、気づいたら手術室にいました。全身麻酔で4時間。本当に寝てる間に終わります。起こされたときは寒気と強い眠気、空腹感しかありませんでした。
麻酔の副作用で何度か嘔吐しましたが、術後3時間で水が飲めるようになり、その日の夜には食事をとることができました。
手術が無事終わった安堵感と今後の不安感で複雑な感情のなか食べた鶏ささみのロールキャベツとおかゆ。全身に染み渡る美味しさでした。
術後
翌日にはすっかり元気。術後3日で抗生物質の点滴が取れ、普通に歩けるようになっていました。「平衡機能なくて良かったねえ!」なんて言われて苦笑い。
術後5日間ほどは毎晩の就寝前に痛み止めを飲みましたが、普段は痛みを感じることは特にありませんでした。それより包帯で巻かれた頭のかゆみ、不快感がつらかったです。
このときテレビでは樹木希林と安室奈美恵の話題でもちきり。聴力を失って興味がなくなっていた音楽ですが、また聴きたいなあと強く思いました。人工内耳でどんなふうに聴こえるのか、期待と不安が半々。テレビは有料、Wifi もないので病院内に置かれていた本を読み漁って過ごしていました。
術後1週間で頭の包帯がとれ、久々のシャワー。あんなにシャンプーを使った日は一生来ないでしょう。来ないといいな…。髪質が変わったのかと心配になるぐらい、洗っても洗っても髪が脂っぽい日がしばらく続きました。
このテープの貼り方キレイすぎませんか。ここから魚のエラみたいに剥がして…と想像するのはやめましょう。
昔は手術前に側頭部の剃髪も必要だったようですが、今は髪を剃る必要はなく耳の後ろに傷跡が残るだけです。抜糸も不要、今では傷跡もほとんど目立ちません。
術後10日で退院、2週間の入院生活でした。
つづく
当時のメモを見返しながら思い出しています。もっと細かく記録すればよかったな。
つづく。