カテゴリ
カナダのDisability Tax Credit (DTC) とは?【海外の障がい者支援】

せっかくカナダにいるなら、使える制度は最大限活用したいですよね。
カナダには障がい者向け制度のひとつとして、DTC(Disability Tax Credit)があります。これは単なる免税だけでなく、さまざまな支援プログラムへの入口となる認定制度。
私も永住権取得を機に申請してみたところ、承認までに約3ヶ月かかりました。遠回りした分、学びも多かった申請の流れをまとめました。
「カナダにも障害者手帳のような制度はあるの?」「申請方法は?」
カナダに住む当事者やご家族の方の参考になればと思います。
DTCとは?障害者手帳との違い
Disability Tax Credit(DTC)は「障害者税額控除」と訳されますが、実際は障害があることを証明する認定のような位置づけです。
日本の障害者手帳(特に1〜2級)に相当する制度と考えると分かりやすいかもしれません。まずは基本を整理してみましょう。
DTCでできること
DTCが承認されると、さまざまな支援や税制上の優遇措置を受けることができます。
- 年間の税額控除(最大約9,000ドル)
- RDSP(障害者貯蓄プラン)の開設
- 各種政府プログラムへのアクセス
日本の障害者手帳との違い
日本の障害者手帳や療育手帳と似ていますが、カナダではあくまでも社会保障番号(SIN)に紐づくステータスのような扱いです。主な違いはこちら。
| 項目 | 日本 | カナダ |
|---|---|---|
| 形状 | 手帳(証明書) | オンライン(CRAアカウント) |
| 主な用途 | 福祉サービス中心 | 税務制度中心 |
| 発行・認定機関 | 都道府県 | CRA(カナダ国税庁) |
なお、DTCは、各州の障害者向けプログラムの受給資格とは無関係です。
障害の程度や種類によって手帳に違いがあるのと同様に、DTCの認定基準にも違いがあります。詳細は、政府の公式サイトをご確認ください。
申請方法と流れ
DTCを申請するには、医療専門家(Medical practitioner)に「重度かつ長期的な身体または精神機能の障害」を証明してもらう必要があります。
申請自体はシンプル。2ステップで完了します。
CRAサイトで申請し、リファレンス番号を取得
医師が Form T2201(障害者控除証明書)を記入し、CRAへ郵送
なお、永住権なしでも申請できます。留学生やワーホリでも、カナダで納税義務がある人なら申請可能です。
参考:Disability tax credit (DTC) ‐ Canada.ca
カルガリーでの申請
実際に申請してみると「医師を見つける」のが一番のハードルでした。
基本的にカナダでは、専門医へのアクセスにはファミリードクター(かかりつけ医)の紹介状が必要になります。私の場合、ファミリードクターもおらず難航。
聴覚障害の場合は、Audiologist(聴覚訓練士)も認定医として指定されています。しかし、カルガリーの多くの Audiologist が「DTC申請業務は行っていない」とのこと。
そこで、アルバータ州の聴覚障害支援団体である Deaf & Hear Alberta(DHA)に相談したところ、以下のような回答がきました。
「既存の診断書があれば、ウォークインクリニックでも対応してくれるはず」
ウォークインクリニックに相談するという発想はなかった!私の中では「ウォークインクリニックは事務作業はしてくれないだろう」という思い込みがありました。

実際の申請プロセス
早速近所のウォークインクリニックに相談。日本から持参した医師からの英文紹介状のおかげで、申請書記入はスムーズに完了。
運良くファミリードクターの登録もできてラッキーでした。
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 2月1日 | オンライン事前申請 |
| 2月19日 | クリニックで申請 |
| 2月27日 | CRAに書類到着 |
| 4月23日 | 承認通知 |
| 4月30日 | 還付金入金 |
DTCが承認されると、過去の税金も自動で再計算されます。私の場合はワーホリ時代の分も合わせて7年分の税金が還付され、思わぬ臨時収入に!
なお、クリニックで払う申請費用(148ドル)は医療費控除の対象になります。
地域による違い(トロントの場合)
トロント在住の聴覚障がい者の場合は、ひとまず CHS(Canadian Hearing Services) に相談してみましょう。
CHS では、Audiologist が直接DTC申請に対応してくれます。州の医療保険(OHIP)に加入していない留学生でも、聴力検査や各種証明書の発行、通訳派遣など柔軟に対応してくれます。(私も留学時代はお世話になりました)
他の障害の場合も、お住まいの州や地域で支援機関や団体が見つかるはずです。カナダは社会保障サービスが充実しています。
まとめ
カナダに住む障がい者の方、日本で障害者手帳を持っていた方にとって、DTCは申請する価値のある制度。
まずは地域の支援団体やサポート機関に相談することから始めてみてください。
もしファミリードクターがいなくても、診断書があるとなにかとスムーズです。移住予定の方はあらかじめ用意しておきましょう。
この記事が少しでも誰かのお役に立てたらうれしいです。
本記事は、あくまでも個人的な経験をもとにまとめたものです。DTCの詳細や最新情報については、政府公式サイトをご確認ください。

