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難聴の私がカナダと日本で経験した6つのバイト【給料から失敗談まで】

日本でもカナダでも、学生時代はバイトをしていました。
今は全く無関係の仕事をしていますが、過去のバイト経験から学んだことは数え知れず。
この記事では、難聴であるわたしのバイト体験談を洗いざらい公開します。
この体験談が、障害の有無にかかわらずコミュニケーションが苦手な人のヒントになればと思います。
きこえなくてもバイトできるの?
当時のコミュニケーション方法
バイトをしていた頃は補聴器を使っていました。
日本語でのコミュニケーションは口の読み取り(読唇)が70%、補聴器での聞き取りが30%です。
一対一で、相手にはっきりと話してもらえば意思疎通できるレベル。
英語の場合は、音声認識アプリや筆談も活用していました。
私のバイト選び
私の場合は、接客業はもともと興味がなく、あえて裏方を選んでいます。相手の口を読み取るのはかなり気力を使うので、メンタル安定を優先しました。
バイトなのでレジュメは簡素なものでしたが、面接はすべて通っています。あえて通りそうなものを選んでいるというのもありますが、運とタイミングが良かったのが一番大きいかも知れません。
特にカナダでは、日本でのバイト経験と、大手企業での経験が活かせたと思います。
過去のバイト経験はこちら。
日本でのバイト
- ガスト(キッチン)
- マクドナルド(キッチン)
カナダでのバイト
- 大学内書店(接客)
- Uber Eats(徒歩配達員)
- ジャパレス(キッチン)
- 手話レストラン(キッチン)
カナダでのボランティア(無給)
- Webサイト運営
- イベントやワークショップの会場設営
聴覚障がい者の接客業
聴覚障害があっても、接客業をされている方はたくさんいます。
私も、スタバやカフェで実際に接客されている方に何人か会ったことがあります。
軽度難聴から重度難聴、手話で話すろう者まで、きこえの程度にかかわらず、本人と周りの工夫次第だと思います。
地元の田舎でも、30年以上前にろうの方が洋菓子店で接客をしていました。「きこえなくてもできるんだ」と幼心に衝撃を受けたのを覚えています。この小さな経験が、難聴者として前向きな価値観をもつきっかけの一つになった気がします。
カナダで出会ったろう者にも、スーパーのレジ業務やネイリスト、Uberドライバーをしている人がいました。
日本でのバイト経験
日本でのバイト経験は遠い昔になりますが、記憶を頼りにまとめてみました。
ガスト(キッチン)
人生初のバイトはガストのキッチン。キッチンなら自分でもできるかも、と近くの店舗に履歴書を持っていきました。当時はガラケー時代、ネット求人もあまりなかった気がします。
3年間で店長は何度も変わりましたが、キッチンはずっと同じメンバーでした。それが難聴の私にはありがたかったです。慣れた人のほうがコミュニケーションを取りやすいですしね。
思い出すのは、お新香。聞き慣れないうえに、キッチンの雑音で全く聞き取れませんでした。最初は正直「下ネタかな?」と思いましたが、「…とはなんでしょうか?」と聞き返すテクを身につけました。
また「連呼されるより言い換えた方が分かりやすい」と伝えるのもコツ。聞き取れない単語を連呼されると焦りも出て余計聞き取れなくなります。お新香なら「つけもの」と言い換えるか「ごはん、味噌汁、お新香」と関連用語と続けてもらうと分かりやすくなります。
この経験は就活にも役立ったと思います。自分の障害について、どのように相手に理解してもらうべきか考える機会になりました。
また、このバイトのおかげで良くも悪くも飲食業界に対する見方が変わりました。まあバイトで知ることなんてたかが知れていますが。
マクドナルド(キッチン)
友人の紹介で、半年ほど働きました。
卒業旅行の資金を貯めるため、深夜シフトも積極的に入り、月20万以上稼いでいました。体力おばけかな。
マックは、視覚的なマニュアルや教育体制が整っているので、未経験でも仕事を覚えやすい仕組みになっています。さすがグローバルな会社は違うなと思いました。
土日のランチタイムは地獄かと思うほどの忙しさ。しかし難聴という視点からみても、ガストと比べて圧倒的に働きやすかったです。
カナダでのバイト経験
トロントでのバイト経験をまとめました。2025年現在、トロントの最低賃金は 17.20ドルです。
大学内書店(接客)
- 時給:当時の最低賃金 + $1
- 期間:1年
留学中に学内求人で見つけたバイト。教科書だけではなく、作業着、靴など何でも売っているようなところでした。
面接は、ビザと希望シフトの確認のみ。マネージャーには「裏方希望」と伝えました。
それでも初シフトでいきなり店頭に立たされました。私キコエナイ…と言うと「問題ないよ。わからないことは聞いて」とウィンクされました。うーん軽い。
質問してくるお客さんには「スマホでタイプして」と頼みながら対応していました。繁忙期は多くの学生が来るのですが、驚くほどみんな快く応えてくれました。
うまく説明できないのですが、良い意味で無関心な反応が多かったです。自分の買い物ができれば満足という感じでしょうか。
もし日本だったら「きこえない」と言った時点で逃げていく人が多そう。
こちらは楽観的な人が多いというか、そういう文化なのでしょうか。困ったら聞く、遠慮せず協力してもらう、もっと気楽に生きていいんだなあ…と思いました。
繁忙期は新学期のみなので、シフト含め全体的にゆるゆるした雰囲気で楽しかったです。
Uber Eats(徒歩配達員)
- 時給:$20〜25(変動あり)
- 期間:半年
日本でもおなじみ、ウーバーイーツの徒歩配達員(Uber Walker)。面接なし、アプリから登録するだけですぐに開始できる自由度抜群のバイトです。
1時間で2-3件、多いときは1時間で$40でした。変動はあるものの、当時の最低賃金を大幅に上回る収入。
近所のレストラン街を中心に、ディナータイムに稼働。徒歩の場合は、配達距離が1キロ以下のオーダーが割り当てられます。
お店では画面を見せて注文番号を確認するだけ。配達時も複雑な会話は不要です。トラブルが発生してもアプリからサポートに報告すれば解決できます。
ダウンタウンのランチタイムも効率よく稼げます。しかしオフィスやマンション(コンド)への配達はインターホンがあるため、難聴者には難易度高め。
そのため、オフィスへの配達や効率が悪いオーダーは拒否していました。
また、治安の悪いエリアや貧困エリアは事前にチェックが必要。当時は運動がてらお金を稼げてラッキーでしたが、今思うと少し無謀だった部分もあります。大きなトラブルがなかったのは運が良かったのかも知れません。
ジャパレス(キッチン)
- 時給:当時の最低賃金 + チップ
- 期間:半年(コロナロックダウン時代)
カレッジを卒業してから現地就職するまでの半年間、トロントの有名ジャパレスでバイト。ワーホリは採用しておらず、スタッフはみんなワークビザか永住権保持者でした。
内容はディッシュウォッシャーと調理補助。息をつく暇もないほど忙しいお店でしたが、それが逆にやりやすかったです。
久々の日本語環境。ロックダウン明けの頃だったため全員マスクをしていましたが、私に話すときはマスクを外してくれました。日本人シェフが作るまかないもおいしかったです。
長く住むなら日本人コミュニティに入っておいたほうが何かと安心だと思います。
手話レストラン(キッチン)
- 時給:当時の最低賃金 + チップ
- 期間:半年
ワーホリ時代は、トロントの手話レストラン SIGNS のキッチンで働きました。現在は閉店していますが、当時はカナダ初の手話レストランとして人気でした。
サーバーは全員ろう者や手話通訳の卵たち。私はまだ手話を勉強中だったため、調理補助として働き始めました。
サーバーと違い、キッチンでのコミュニケーションは口話がメイン。オーナーやシェフは手話ができない聴者でしたが、ゆっくり話してくれたおかげでストレスなく働けました。
タイ人シェフが作るまかないがとても美味しくて、彼女の料理を楽しみに働いていたようなものです。カナダ人や移民、人種もバックグラウンドもさまざまな人が働いていました。
普通のレストランではできない貴重な経験ができたと思います。
カナダでのトライアル失敗談
カナダでのバイト探しの失敗談として、トライアルでの経験を共有します。
この失敗のお陰で無駄なく仕事探しができるようになりました。
トライアルとは、試用期間のこと。パートタイムの場合は1日〜1週間が多いです。
個人経営ジャパレス
トロントに着いて初めて応募したのは、個人経営の小さな日本食レストラン。
面接に行くとそのまま1週間のトライアルが始まりました。
オーナーは忙しくなるとキツくなるタイプの人で、ある日「お前全然聞こえてないじゃねえかァ!!!」と罵倒されました。カナダ生活で唯一傷ついた経験…と言いつつ、私も負けず嫌いなところがあるので控えめに抗議していました。
最終的には、サーバーもキッチンも一人で回せる人がほしいとのこと。「サーバーが難しいなら、早朝の仕込みとWebサイト運営を手伝ってほしい」と言われました。
時給設定があいまいだったこと、そしてオーナーとの相性を鑑みて辞退。「一晩考えて」と妥協案を出してくれたのに、生意気な私はその場で即答しました。ちょっぴり反省。
辞めたあとも気にかけて連絡をくれるほど (普段は) 穏やかなオーナーでした。今の私なら彼の苦労も慮ることができるので、悪い人ではなかったんだろうなと思います。
現在は閉店しており、音信不通です。お元気かしら。
シーフード加工場
次に応募したのは、郊外のシーフード加工場。早朝シフト、バスで往復2時間という懸念がありましたが、業界に興味があったので応募しました。
面接は簡単な質問のみ。ひとまず一週間トライアルやってみようということになりました。
最初の仕事は、ガス栓の開け閉め。作業場の雑音がひどく何も聞こえない。また設備も古くて大きく、恐怖感を覚えました。おっちょこちょいな私、いつか事故を起こしそう。
カナダに来てまでやりたいことか?と考えると無理だなあと思いました。体力はどうにでもなりますが、何より時間がもったいないと感じたのが大きな理由。
拘束時間と給料のバランス考え、トライアル1日目で辞退しました。
まとめ
バイトに限らず、昔と比べて聴覚障害があってもできる仕事の幅は広がっていると思います。
どんな仕事であれ、周囲の理解とサポートが不可欠。また、自分に合った職場選びも大切です。
接客が苦手なら裏方を、人との関わりが好きなら接客にもチャレンジしてみる。選択肢は思っているより多いはずです。まずは挑戦してみること。
そして、採用されなかったからといって落ち込む必要はありません。縁がなかっただけ。そんなところに採用されたとしても、働きやすい職場であるとは思えません。
私自身、若さゆえの失敗や無礼もたくさんしましたが、すべて今につながるいい経験だったと思います。
当時お世話になった方々、この場を借りてお詫びします。(こんな弱小ブログが読まれることはないし、読まれないことを祈りますが笑)
この体験談が、いろんなひとの仕事探しや理解の促進に少しでも役立てばうれしいです。

