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北海道出身、カナダ在住8年目。難聴。トロントでのワーホリと留学を経て、現在はカルガリーでひっそりと暮らしています。

オーディズム (Audism) とは?具体例を交えて徹底解説

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耳に手を当てている少年の横顔

オーディズム (Audism) という言葉をご存知でしょうか。

私はカナダで、この言葉に初めて出会いました。それまで難聴者として、なんとなく抱いていた違和感をきちんと言語化できることを知り、救われたような気がしました。

この概念は、1975年にアメリカのろう研究者トム・ハンフリーズ氏によって提唱されたものです。

日本での認知度はまだ低いものの、聴覚障害者が日常で直面する差別や偏見を理解するうえで重要な概念です。

本記事では、オーディズムの意味や背景、具体例をわかりやすくまとめました。

※ Autism (自閉症) ではなく、Audism ですよ。

目次

オーディズム (Audism) とは

Audism は「Audio(音・聴覚)」と「-ism(主義)」を組み合わせた造語。

日本語では「聴能主義」「聴力至上主義」「聴覚障害者差別」などと訳されます。当事者のあいだでも「オーディズム」という言葉で定着しつつあります。

ひとことで言えば、「聞こえることが正常で当たり前」という価値観に基づき、聞こえない人を劣っているとみなす差別や偏見、抑圧のこと。

では、なぜこの概念が生まれたのでしょうか?歴史を少し振り返ってみましょう。

1880年:ミラノ会議

「ろう教育では手話を使うべきではない」と決議(ひどい話ですね)

20世紀前半:優生思想

「ろう者は子どもを作るべきではない」という優生思想が広まる(ひどい話です)

1960年代:ろう者の権利運動

アメリカの公民権運動をきっかけに、ろうコミュニティでも権利運動が活発化

1975年:「Audism」の提唱

アメリカのろう研究者トム・ハンフリーズ氏 (Tom L. Humphries) が Audism を提唱

現在は、国連障害者権利条約などを通して聴覚障害者の権利が少しずつ認められるようになってきました。

それでも、日常の中ではまだまだオーディズムが根強く残っています。

オーディズム (Audism) の具体例

「ろう・難聴者あるある」の例は、ほとんどがオーディズムに当てはまります。

会話での「あるある」

  • 聞き返すと「やっぱりいいわ」「大した話じゃないから」と打ち切られる
  • グループの会話に置いていかれ「後で説明するね」(でも結局説明されない)
  • 筆談を頼むと、露骨に嫌な顔をされる
  • タメ口や子ども扱いのような話し方をされる

こうした対応の多くは、悪気がないどころか、むしろ親切心のように見えます。

でも当事者からすると「人として対等に扱われていない」という感覚につながります。

情報とは何か、そして、情報から切り離されるとはどういうことか。一度立ち止まって、「伝える」ことの大切さに思いを巡らせてみてください。

褒め言葉「あるある」

  • 「聞こえないのに発音きれいだね」
  • 「聞こえないのに頭いいんだね」
  • 「口が読み取れるなんてすごい」

こうしたほめ言葉にも、「聞こえない=できない」という価値観が無意識に隠れていることがあります。

もちろん、相手の努力や背景を想像したうえで、純粋に「すごい」と伝えている場合がほとんどだと思います。

ただ、その「努力」は本来しなくてもよかったかもしれないもの。そうせざるを得なかった環境や負担にまで思いをはせてみると、見え方がすこし変わるかもしれません。

社会参加の制限「あるある」

  • 「運転は危ないのでは」(免許取れます)
  • 「電話できないと困ります」(連絡手段は電話だけではない)
  • 「子育ては難しいのでは」(きこえない親もたくさんいます)

これらは心配しているつもりでも、実は「できないはず」という思い込みから出てくることが多い言葉です。

きこえない人も、環境や工夫があれば当たり前に生活できます。

「どうすれば参加しやすくなるか」と発想を変えるだけで、お互いが気持ちよく行動できるはずです。


挙げたらきりがありませんが、これらの多くは悪意ではなく、無意識や無知から生まれます。

心理学ではこうした言動をマイクロアグレッションと呼びます。特定の属性に対して、偏見や先入観から無意識に相手を傷つける言動をさします。

こうした態度の根底にあるのは「聞こえることが普通」という価値観。

つまり、聞こえないことを下に見ているからこそ生まれるオーディズムの表れなんですね。

言語差別(Linguicism)との関係

手話を「ジェスチャー」や「身振り手振り」と捉えている方も多いと思います。

しかし手話は、文法・語彙・表現力を備えたれっきとした言語。

それにも関わらず、手話に対する言語差別(Linguicism)は根強く存在します。

言語差別とは、特定の言語が他より劣っているという偏見から生まれる差別や抑圧のこと。

カナダでも、歴史的にフランス語話者が英語社会で差別を受けてきた時代がありました。言語差別はどこにでもあります。

「手話は音声言語より劣っている」という言語差別もまた、典型的なオーディズムです。

日本の場合、「日本手話」と「日本語対応手話」があります。これらは文法も構造も全く別もの。同じ「手話」でもこんなに違うのですから、音声言語と比べること自体が無理のある話です。

きこえる人が自然に身につけた日本語は、きこえない人にとっては外国語以上に難しいのは容易に想像できるはず。

逆に、手話が流暢な人ほど言語化能力が高く、日本語能力も高い人は沢山います。

手話も日本語も、どちらも話者にとっては大切な言語。優劣なんてありません。

ろう・難聴者同士にもあるオーディズム

オーディズムは、聴者からだけではなく、きこえない人同士の間でも起こります。

「きこえない人」といっても、立場や経験によって考え方も多様です。

自分のことを表すアイデンティティも人によってさまざま。

  • ろう者
  • 難聴者
  • 聴覚障害者
  • 中途失聴者
  • デフ

中には、ろう社会と関わりを持ちたがらない人や「手話を使う人より話せる自分の方が上」と考える人もいます。

これは誰のせいでもなく、社会や環境がそうさせるのでしょう。以下のような理由が考えられます。

  • 様々なろう者・難聴者に出会う機会がない
  • 聴者と同じように振る舞うことを強制される
  • 手話に否定的な環境で育つ
  • 障害を克服する美談を聞かされる

‪恥ずかしながら、私自身も手話を学び始めた頃は、公共の場で手話を使うのに抵抗がありました。

今思えば、これもオーディズムの一種だったんですね。

私たちが今日からできること

オーディズムをなくすために、何ができるかを考えてみましょう。

意識を変える

まず、自分の中のオーディズム思考に気づくこと。

「聞こえない」ことに対して「かわいそう」「劣っている」という無意識の思い込みがあるかもしれません。

そんなつもりがなくても、態度に出てしまう人は多いです。

聴力の有無で人の優劣が決まるわけではない…ということを心に留めておきたいですね。

行動を変える

聞こえないひととのコミュニケーション方法は、本人に聞くのが一番。

手話、筆談、口話、音声認識アプリなど、状況や場面に合わせて選択肢はいろいろあります。

「どんな方法がいいですか?」と 聞かれて嫌な顔する人はいないと思います。(いたら教えて下さい)

また、身近に「聞こえにくい人がいるかもしれない」という想像力も大切です。

公共機関・イベント・お店など人が集まる場所で、文字情報や手話通訳があるだけで助かる人がたくさんいます。

オーディズムに関する動画・資料

オーディズムについてもっと深く知りたい方のために、参考になる動画や資料をいくつか紹介します。

他にも、YouTube や SNS で「Audism」「オーディズム」で検索すると、当事者の生の声がたくさん見つかります。

ドキュメンタリー:Audism Unveiled

私が Audism という言葉に出会うきっかけになったドキュメンタリー映画です。

有料 ($6) ですが、英語やASLが得意な方はこちらからオンラインで観れます。

日本では「オーディズムについて対話しよう」というタイトルで日本語字幕版が上映されました。

『オーディズムについて対話しよう』メッセージ動画|東京国際ろう映画祭 2021

TED Talk

Effects of Linguisticism and Audism on the Developing Deaf Person | Peter Hauser

ろう心理学者の Peter Hauser 氏によるASLスピーチ。音声通訳と英語字幕があります。

オーディズムがろう者の成長や心の発達に与える影響について解説しています。

参考リンク

オーディズムに関する論文も多く発表されています。より学術的な情報はこちらを参考にしてください。

まとめ

オーディズムは、私たちの社会に深く根付いた「聞こえることが当たり前」という価値観から生まれます。

この記事を書きながら、私自身の中にもまだオーディズム思考が残っていると感じました。

一人ひとりの小さな気づきと行動が、社会を変えていくことを願ってやみません。

本記事は、あくまでも当事者としての個人的な経験と学びを基にまとめたものです。

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